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「何を切る?1月分解答」
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大貝 博美プロ の解答  切り

北海道の皆さん、あけましておめでとうございます。
年明けの麻雀、調子のほどはいかがでしょう。
私の方はけっこういいことがありましたので、まずはその話から。


それは年も明けて間もない1月8日の20時半、常勤しているお店での出来事でした。
フリーが4卓とセットが4卓動いていて、スタッフのうち2人は本走中です。
立ち番をしているのは私と店長さんの2人。
するとフリー卓の1つにラストがかかり、私が飛んでいきました。
計算などに立ち会いゲーム代をいただいた私、
ゲームを終えようと立ち上がったお客様に
「Sさん、あと1回打つとちょうど10回ですよ」と声をかけます。
こういった1回でも長くお客様に打ってもらおうという試み、
どの雀荘でもよく見る光景でしょう。
しかしSさんは、猫なで声まで使った私の策略に乗ってくれません。
若いのにずいぶんしっかりした方です。
お待ちのお客様もおらず、これはスタッフが入って卓をつなぐことになりますね。
『店長に本走してもらって一人立ち番しよう』と思って目をやると、
店長は別の卓で代走をしています。
そちらのお客さんはどうやらお仕事の電話が長びいているようで、
もうしばらく戻ってきそうにありません。
もういいや、とりあえず座っちゃえ。
「お待たせしました、本走に入ります。よろしくお願いします。あ、私が起家ですね」
とか言いながら手元にある配牌を開きました。
使っているのは皆さんご存知の自動配牌卓です。
するとその13枚がこんな感じになっておりまして。



お。
親の私がツモらねば始まらないので、理牌は後回しでまず1牌持ってくるとこれが

「んー、ツモ・・・」自身初めての天和完成です。
ちなみに私の雀歴は45年。
半世紀近く打って初の天和ですよ。
最初の地和までも30年かかったのである程度の覚悟はしていましたが、それにしても45年。
長らく雀荘で働いてきた中でお客様の天和は何回か見てきた私、
その中には麻雀を覚えて間もない方が一所懸命理牌してから
「これ、アガってます」とかいうシーンもありました。
立ち番をしている私が横からしゃしゃり出て、
「それって人生でおそらく一度きりのとてつもなく大変なことですよ。
もっと興奮してくれなきゃ困りますよぅ」などと大騒ぎしてきたのですが、
いざ自分が成就してみると意外にあっさりしたものでしたね。
倒牌の前に当然理牌したわけですが、その手はややおぼつかなくなってましたけど。
うわべは平静を装っていたものの、内心ではかなり高ぶっていたようです。

心中喜ぶ一方で、この天和には気まずさも伴いました。
何が気まずいかというと、その理由は二つ。
このお店には「誰かが6万点に到達したら終了」といった、いわゆる天井はありません。
今座ったばかりのスタッフがいきなり親の役満などツモったら、
その後の丸々2周はトップになるチャンスが極めて少ない
退屈なゲームになってしまうわけです。
実際、その後ほとぼりが冷めるまではかなりの気詰まり感がありました。
まあ気まずくなるとわかっていたとしても、
なにしろ45年目にして初めてですから絶対アガるんですが。

そしてもう一つの気まずさの理由はこの顛末があまりに急すぎ、
たった今席を立ったばかりのSさんがこれを目撃してしまうという、
彼にとっての大悲劇。
ドラ出し機能つきの自動配牌卓、そしてなおかつ回り親ですから、
前の半荘のオーラスが行われている時の卓内では
「次の半荘の東家に天和ができる」ことが決まっていたわけです。
そのオーラスに連チャンがあった場合、
続く1本場の西家にダブリーが、ことによると地和が入っていたことになりますけどね。
しかし実際には連チャンはなく、件の結果に。
サイコロを振って配牌を取り出す卓だと
ボタンを押す長さで結果が変わったりするのかもしれませんが、
この卓の場合は誰がそこに座っても天和なんですよ。
なのでSさんを『うわ、あと1回打つ気になってりゃ俺が天和だったのかよ』と、
わが身を呪いながら家路に着かせることになってしまったわけです。
ああ気まずい。
とはいえ45年かかった天和ですから、やっぱり全然アガるんですけれど(笑)。

帰る道すがらこんなことをつらつら考えていたのですが、
次第に「すでに決まっていた運命が偶然私の元に転がってきただけのこと」だと思えてきました。
お客様の電話が長びかなければこの天和は店長の元に舞い降りたわけですし、
私のひっぱりが奏功していればSさんのものでしたし、
前局に親のアガリがあればそもそも天和自体がなくなるわけですし。
たまたま抽選に当たっただけです。
ビバ偶然。
そしてまた、自動配牌卓での天和は
旧来の卓におけるものよりもありがたみが少ないことも知りました。
自力で作った感触に乏しいというか。
4牌ずつ3回持ってきた時点での、
あの『お、チョンチョンがなら天和じゃん』という
トキメキはもはや過去の遺物です。
初めての天和はいろいろと思うことの多い、ちょっと不思議な体験だったと言えますね。



必ず前段の方が長くなってしまうのが私の文章。
毎年毎年のことなので、このコーナーをいつも見られている方々は
あらかじめ覚悟されていたことと思いますが。
ホントにすみません。
そろそろ何切る?の回答にかかりましょう。

あれれ、新年早々ずいぶん厄介な手になっちゃったものですね。
まあ厄介でなければ、何切るの問題にはならないと思いますが。
今回の問題は選択肢が多すぎ、いつにも増して厄介です。
この2巡目も含めて何度も岐路が訪れそうな手格好で、
どちらかというとゴールインが難しい手に思えますね。
選択の機会が多ければ多いほど裏目をひく可能性も高まるわけですし。
さっそくどこかを見切らねばならないわけですが、
いずれの打牌を選んでも裏目があります。
さてどうしましょう。
シュンツ中心のメンツ手に向かうか、あるいはトイツ手重視でいくか。
まずはその決断をしなければならないのでしょうか。

もしもメンツ手を目指すならば打がよさそうに思えます。
6ブロックあってトイツ3組の手牌なら、単独トイツを外すのがメンツ手狙いの手筋ですから。
の部分に1メンツと雀頭を見込み、
残りはリャンメン3組を軸にしたシュンツ作り。
すぐにをひかない限りはも手離すことになりそうですが、
全てのドラを無理に使い切ろうとしてアガリを逃してしまっては元も子もありません。
まだ始まったばかりですし、
『満貫で十分、ハネ満になればラッキー』くらいのつもりで手を進めるのがよさそうです。

と書いておきながら、私の決断は切り。
私の経験則では、こんなに中張牌ばかりで
なおかつリャンメンだらけの配牌の行く末はパターンがほとんど。
(1)リャンメン4組のうちの一つが早めにひけた場合には、容易にピンフで仕上がる。

(2)逆に序盤のツモが横に伸びずに重なってきた場合には、
その先もシュンツができるようなツモはなかなかこない。
このどちらかに該当することが圧倒的に多いと思っているんですね。
(1)よりも(2)の方がやや多いかな。
つまりピンフに向かった場合は一気呵成にテンパイに至るか、
あるいはリャンシャンテンあたりでモタモタしてしまうかの
どちらかだということです。
ましてというタテヅモからきたここは、ピンフに重きを置くのは早計だと思うのですね。
なのでには手をかけられないことになります。

「ならば最初からチートイツに決めればいいじゃん」と言われますか?
たしかに私も『この手は8割方トイツ手だろう』と思っています。
いきなりのツモはこの先もタテヅモが来る予兆のように思えますし、
場に出た数牌が全てピンフを目指した場合の有効牌であることも
シュンツができないサインであるかに見えますし。
でも慎重な(悪く言えば臆病な)私は、
かなりの打点が約束されているこの手をチートイツ一本に絞るほど腹を括れません。
巡目が早すぎて、今ツモったがノイズである可能性も捨て切れないんです。
つまり「シュンツ手かトイツ手かの判断をもう1巡だけ先送りするため、
トイツでもなくリャンメンを嫌うことにもならないを切ってお茶を濁そう」という、
実に煮え切らない回答なわけです。

「こんなのはタテびきが来るにに決まってるんだから、
チートイツから三色同刻までにらんでドラ表のを切る!」
とでも答える方が読まれる皆さんとしてもスッキリするのでしょうが、
元々歯切れの悪いのが私の雀風。
まあそういう潔い打牌担当の回答者はすでにお一方いらっしゃるので、
そちらにおまかせしておきましょう。
深く考えずにパッと見で切るとしても多くの方が選びそうな、
いかにも陳腐で垢抜けない打牌に見えるでしょうけどね、
切りというのは。
年明けの回答者に任命されることの多い私ですが、
なぜか新年にふさわしくない回答ばかりしている気がします。
景気づけにもならないことに対し、
心から申し訳なく思いながら答えさせていただきました。

なお去年は「スッタンテンパイから2軒リーチにオリた」などという出来事もあり、
最初はこの件を冒頭に持ってくるつもりだったんです。
回答を送る直前に天和ができたことで書き直したんですけどね。
いっそその話も書こうかと思いましたが、
するとこの倍の長さになってしまいます。
そもそも私のエッセイのコーナーではないので長すぎるのもアレですから、
その話はまたの機会にしましょう。
え、エッセイじゃないと気づくのが遅い?
重ね重ねすみません、次は気をつけます。
それでは今回はこのへんで。
今年の皆さんの麻雀ライフがより豊かなものとなりますように。


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