People−15

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「People 15 旅人魂」


長いあいだ波に揺られ、フェリーは小樽港に無事到着した。
いったい、何日ぶりだろう?
そんなに日数は経っていないのに、
現実に戻ってきたという、ものすごい懐かしさを感じてしまった。

旅から帰ってきて2,3日後、
札幌で過ごしていたいつもと変わらない生活に僕は戻っていた。
朝1番でハートランドに向かい、夜になればフラフラと飲みに出かける。

こっちに帰ってきてから、彼女や友達なんかと楽しい時間を過ごし、
お家で不自由なくご飯を食べて、あったかい布団でお眠りする。
そんな時ふとチャリンコの旅を思い出すと、クスッと笑える。
そしてチョット淋しくなる*

まだあと、夏休みは2週間ほどある。
しかし、旅の資金などはほとんどなく、小銭しか残っていない。
そんな中で、僕の「どこに行こうかリスト」に上がったのは、
函館に単身赴任している父の元へ遊びに行くことだった。
(やっぱりチャリです)

またしてもあまり考えずに結論を出しており、
次の日には僕とモロロン号は函館へ向けスタートしていました。
一日目は洞爺湖で野宿。
二日目は、おばちゃん家のある八雲町へ、
そして函館には、三日目に到着した。

函館は、僕にとっては故郷とも呼べる場所。
小さい頃に何年か住んでいたことがあり、
子どもながらの思い出がいろいろと残っている。
僕はモロロン号で函館のマチを走り、感涙に包まれていた。

四日目、車に乗って親子で道南をドライブ。
なにやらいろいろ見て周っているうちに江差に到着。
ちょっと休憩がてら車を降り、親子で記念撮影。っとその時、
元気よく、「奥尻行きのフェリーは○時○分出発で〜す!」
というアナウンスが入った。
辺りを見回すとなにやら、フェリー乗り場らしきものがある。

ピっキーん★僕の旅人魂に火がついた。

僕 : 「父ちゃん、悪いけど俺、
    こっからフェリー乗って奥尻島行くわ。」
父 : 「へっ??」
母 : 「手ぶらで??」
僕 : 「なんとかなるからダイジョウブだよ*」
父 : 「わかった。ちょっと待ってろ!」

数十分後に父ちゃんは、寝袋と食料(パン)を買って戻ってきました。

僕 : 「ありがとう。それじゃチョット行ってくるね、
    あさってまでには函館に帰るよ」。
母 : 「ちゃんと帰ってくるんだよ。気よつけてね〜。」


僕の乗った、小さな奥尻行きのフェリーは父と母に手を振られ、
ゆっくりと港を離れました。

フェリーに乗ってから僕は、父から貰ったパンをモグモグと完食しました。
それから30分くらい経った時でしょうか、
日本海が突然、暴れはじめちゃったのです。
出航時の緩やかなフェリーの揺れとは裏腹に、メチャメチャな揺れでございます。
すごい、こりゃすごい揺れだ!
船長さんが気を抜いたら本気で沈没しちゃうよキット。
うっっぷ・・・・・気持ち悪すぎる・・・・・。
僕はこのフェリーに乗るのがはじめてだから、慣れていないだけなのか!?
そんな思いを胸に辺りを見回した。
すっすると・・・・・信じられない光景が!!
このフェリーを普段利用している、お客さんもテンパッテいる。
子どもはみんな、泣きながら父・母にしがみついている。
時間の経過とともに、放銃(ゲ○)しはじめる輩が増えてきた。
僕は、さっき召し上がったパン達の逆流をこらえるのが精一杯。
細心の注意を払ったものの、思い虚しく奥尻島到着を目前としながら、
ついに僕も、放銃という魔の手から逃れることはできませんでした・・・・。

つづく


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