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People 10 車進入禁止地帯 朝9時くらいに出発した僕は新井市を抜け長野への難関、 妙高高原への道のりへと差し掛かかろうとしていました。 道はなかなかの斜面である。 自転車をこいで進めないこともないのだが切り替え不足(速度切り替えのこと)の モロロン号では常にフルパワーでこがないとこの斜面は登れない、 体力的に自転車をこいで高原まで行くのはハッキリ言って無理であります、 自転車に乗れないとなれば選択肢はただ一つ、僕が自らモロロン号を押して 妙高高原(2000m級)を歩き、登りきらなければなりませぬ。 つ、つらい!この中途半端な斜面の道はいつまで続くの? 本日の目的地は長野。 しかしこんな歩きのペースじゃぁ無理無理無理〜!っということで目的地を変更、 高原を抜けた所にあるとおもわれる野尻湖を目標にしました。 野尻湖までは30数キロ、 地図を見る限り完全な登り道、 ぜぇぜぇ言いながら歩き続けていると色んな思考が頭をよぎる。 「なんで僕はモロロン号と一緒に長野に向かってしまったの? どう考えてもただのおバカさん・・・。」 はたから見たらもっともっとおバカさん、だってママチャリで 日本アルプスの方向に向かっているのですよ。 昨日おばさん達とご飯を食べている時にみんなが声を揃えて 自転車で越えるのは無理と言っており、 おじさんはトラックにモロロン号を乗せて長野近くまで送ってやるよと言ってくれていました・・ お酒を飲みながら、そして笑いながら話していたので 僕にはその言葉がなかば冗談っぽく聞こえてしまっていた。 そのせいか僕はそこで冗談のような感じで言葉をかえしていました・・ 「ダイジョブですよ〜!あはははぁ〜ダイジョブ,ダイジョブ♪」。 僕は唯一のチャンス到来を笑いで吹き飛ばしていたようだ・・・・ あぁ、あの時に戻りたい、戻りたい”・・・・ そんなことを思い出したり、色んなことを考えたりしながら歩いては休み、 歩いては休みとゆっくりと進んでいくうちにようやく夕方前に 野尻湖に到着することができました。 僕はまずテントを張れるような場所を探しました。 しかしいくら探してもそんな所はない、 湖畔の周りはログハウスのような建物と車で埋め尽くされている、 湖畔からしばらく行ったところにキャンプ場のようなものを発見したのですが、 そこはもうすでにいっぱいで僕がテントを張る場所はありませんでした。 野尻湖でテントを張るのは無理だとあきらめた僕は 適当に夕食を済ませ湖畔周辺をしばらく歩いていました。 はて、野尻湖は若者に人気があるのだろうか? けっこう若者がいる、しかもやたらと女の子ばかりのような気がする! 僕はベンチを発見し湖畔を眺めながら座っていた。 っとその時背後から、女性二人が話しかけてきました。
解説:”こんな話のあと僕らは他愛も無いことを2時間近くも ベンチで話しておりました、そしてあたりも暗くなってきて 僕たちはそろそろ野尻湖を後にしようということになりました。 彼女たちは長野までは車だとそう遠くはないから車にモロロン号を積んで 長野まで行こうということになりました”。
僕はなぜか車の外。
彼女たちと別れを告げた時にはあたりはもうすっかり暗くなっていました。 早く寝床を探さなければ大変なことになってしまう。 峠道のような緩やかな下り坂を僕は30分ほど走りました。 夜の峠道は暗くて危ない、しかも車がみんなスピードを出しているので もうこれ以上走り続けるのは自殺行為である、危険を感じ自転車から降り、 とても歩道とは呼べないような狭い道を僕は歩きました。 何十分か歩いていると谷側に鎖のような物で進入を防いでいる所を発見しました。 もうこのままあるいても街に出る気配はいっこうにない、 右を見ても左を見ても木に囲まれた、このどこまで続くかわからない道には テントなど張る場所などおそらくないだろう。 そんな状況の中で発見した鎖の先にある進入禁止地帯、 その先に何があるかわからないが何かある以上そこには道のようなものがあるはずだ、 道があるならばそこに僕の一人用のテントくらいなら張れるはず、 暗闇の中いくてを阻む鎖の前でしばらく考えたすえ 僕は危険を承知で進入禁止の先に進むことにしました。 リュックから懐中電灯を取り出しその明かりを頼りに ぼくは砂利のような道の上を進んで行きました。 「ザァーザァー」っという音が聞こえてくる、雨ではない。 歩くにつれてその音はしだいに強くなってきた! 懐中電灯では道の先に何があるのかは確認できなかった、 恐怖を感じた僕はしばらく動かずじっとしていました。 すると突然暗闇で視界を閉ざされていたはずの僕の目に とても美しい情景が飛び込んできたのです。 今まで雨雲に閉ざされていた月が姿を現したのです。 月の光は流れの速い小川を照らしていました、 さっきまであった恐怖心は一瞬にしてどこかに消し飛んでしまい、 その美しい情景を見ているとなぜか心が満たされていく、 寝袋をひいて横になっている僕の疲れきった体はしだいに地面へと吸い込まれてゆく、 そして僕はこの自然の中でゆっくりと眠りの世界へと足を運んでゆくのでした。 つづく |